建築家からのメッセージ 河崎 和浩 Vol.3

建築家からのメッセージ

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店舗や店舗付き住宅も、住宅も、営む&住まう方々の「夢や想いをカタチに」

空間デザイナー・河崎和浩先生のメッセージをお届けするシリーズ最終章。
今号では、先生のルーツでもある店舗を備えた、住宅1例のデザイン面でのこだわりをお伺いするとともに、店舗付きに限らず、家を建てたい方々へのアドバイスもいただきました。

河崎 和浩 - Profile -

多種多彩な店舗デザイン経験のノウハウを住宅デザインにも活用。

河崎 和浩 -Kazuhiro Kawasaki-
1963年生まれ。広島県出身。空間デザイナー

河崎和浩デザインスタジオ
渋谷区恵比寿南2-8-2 キョウデンビル2F
tel:03-5724-3438

ホームページ新しいウインドウで開きます
http://www.kazuhirokawasakidesignstudio.jp

PHOTO右:河崎さん
PHOTO左:多種多彩な店舗デザイン経験のノウハウを住宅デザインにも活用した一例。

動線や視線、空間に工夫満載の寿司屋邸宅

私は、今までに店舗付き住宅もデザインしてきましたが、その一軒が山口県柳井市の寿司屋邸です。
老朽化のために取り壊しとなるアーケード街をリニューアルしてできる商店街に、1階店舗、2~3階自宅を新築し、当初は大将ご夫婦とお子様2人、お母様、お姉様の6人で住まわれるとのことでした。

まず、店とプライベートをなるべく切り離すことをポイントにデザインを詰めていきました。
家族営業のため、自宅から店へすぐに降りられる動線は必要なのでお客様に見えない場所に設け、店舗入口は公園があり、人通りも多い南面に配置。東面は歓楽街だったので閉じ、家族の玄関は西面に設けました。

地方都市では、寿司は、落ち着いて食べたい客が多いというので、1階店内は、カウンター内の大将からは店全体が見渡せるけれども、客同士の視線が遮られるように柱や壁を設置しました。 

また、先代大将が集めたという東海道五十三次の皿を座敷に棚をつくって並べたり、前の店で使っていた古材は木片をトイレの壁に埋め込み、後からライトを当て、間接照明に活用。
それから、元高校球児で甲子園大会は観たいという大将のために、カウンターの隅にテレビも置きました。

2階には、陽当たりのよい東南にお母様の部屋、他にリビングダイニングとサニタリー、3階には、4部屋を設けました。

南面の公園が川の土手のやや高い場所にあったため、南面の部屋は、プライバシーを保ちながら複数の小窓から光を取り込むようにし、洗濯物を外に干したいというお母様の部屋には、テラスに囲いを設けました。
外壁には、店舗が独立して見える工夫も施しています。

施主様には、使い勝手がよいと喜んでいただけました。
第1回でお話しした内側の発想からの家づくりに加え、その先の暮らし方を導けるようなご提案もできたのではないかと思っております。

柳井市の店舗付住宅外観(南面の店舗入口側)
▲柳井市の店舗付住宅外観(南面の店舗入口側)

柳井市の店舗付住宅1階部分の模型。写真左側が店舗部分、右側奥のプライベート部分とは切り離して設計
▲柳井市の店舗付住宅1階部分の模型。写真左側が店舗部分、右側奥のプライベート部分とは切り離して設計

これまでに設計された店舗一例

それぞれの夢や想いがデザインのヒントに

店舗、店舗付き住宅、住宅に限らず建物を建てられる方は、夢や想いを、必ずお持ちだと思います。
以前、店舗デザインをしたときのお客様は、「雨上がりの晴れた朝、光がパーッと注ぎ、路面がキラッと光るようなお店」というイメージを語られました。
その言葉から、床にはツヤのある素材を使用し、ライトは上からではなく斜めから当て、光がわくような高揚感を表現しようというプランが浮かんできました。

住宅の場合も同様です。
家族構成やライフスタイル、趣味などの基本情報とともに、漠然としていてもよいので家や住み方に対するイメージや、「何々の映画で見たようなキッチンがある家」など、何でも諦めずにお話いただければ、それをヒントに私たちは実現できるプランを考え、形にしていきます。
夢や想いをプロに伝えることが、家づくりの第一歩になるでしょう。

左PHOTO:これまでに設計された店舗一例

掲載日:2010年1月31日